敷金や礼金は、通常“家賃の●ヶ月分”というように示されています。
何ヶ月分になるか、もしくは敷金や礼金が有るのか無いのかというのは物件によって異なりますが、どこにおいても家賃が基準となるのには変わりありません。
では家賃の仕組みはどうなっているのでしょうか。

家賃の相場は、物件の地域・立地・築年数・設備など、様々な要素をもとにして決められています。
大家さんにとっては重要な収入となるものですが、かといって大家さんが好きなように決められるものではありません。
高収入を得たいからといって古い建物なのに家賃を高額に設定しても、入居者は同じ額ならなるべく新築に近くて設備も整っているところを選ぶだけですからね。

物件がある地域が東京と地方という違いであれば、似た物件でも家賃は2~3万円くらいの差はあるものですが、一定地域内であればいくつかの物件を比較して、それぞれの要素から家賃の相場を導き出すことができます。
その上で平均よりも若干安い家賃の物件があれば、そこが狙い目だとも考えることができるでしょう。

同じ建物でも、部屋によって家賃は異なるものです。
例えば、階数による違い。
大抵は階数が上にいけば上にいくほど家賃は高くなるもので、1階上がるごとに一定額家賃も上がっていきます。
また、角部屋かそうでないか。
角部屋というものは隣人が片側にしかおらず、また窓も多めで採光が良かったりと利点があるので、そのために人気もありますが家賃も高くなっています。

敷金と礼金がそれぞれ家賃2カ月分必要となった場合、家賃が1万円異なるだけでも、初期費用の合計の差が4万円にもなります。
敷金や礼金が安ければ良いというものではないので、家賃のこともしっかり考えておきたいものです。



敷金トラブルで特に多く、また起こりやすいのが、フローリングや畳といった床に関するものです。
人が移動するにも物を奥にも必ず接する面が床ですから、床というのは傷も汚れも生じやすいもの。
そのため、国土交通省のガイドラインではどこからどこまでが貸主・借主の負担かを細かく定められています。

例えば、家具を置いていたことによる床の凹みですが、人が生活する上で家具は使うものであり、よって床の凹みも必然的なもの。
これは借主の過失ではないので貸主負担となります。

また、雨や結露による窓付近の変色やカビですが、これは貸主負担。
雨の日に窓を開け放したり、雨が吹き込んでもすぐに拭き取るなどすれば防げたことなので、貸主の過失と考えられるのです。

このように細かく定められていても敷金トラブルが起こってしまうのは何故でしょう。
理由は、現状回復のために期間を要するため。
期間はたった1日か数日か現状回復の内容によりますが、どちらにせよその間その部屋は貸し出せなくなってしまいます。

例えたった数日の現状回復でも、月6万円の部屋の場合日割り計算すれば1日あたり2千円損していることに。
入居者の募集だけならできてもすぐに借り手が現れるとは限りませんし、現状回復が終わってなければ内見も難しく、なのに修繕費用は必要に。
これらの損額をなんとかして補いたいというのが貸主の心情なのですね。

しかし、今では国土交通省のガイドラインがある以上、なんでもかんでも支払わなくてはならないなんてことはありません。
そのガイドラインも、しっかりと理屈に基づいて定められているのです。



礼金というものが生まれた経緯は、以前に説明したとおり、戦後住まいを確保する大変さにあります。
戦後・・・ということは戦中に住まいを失ったためということになりますが、住まいを失う大きな原因はやはり空襲でしょう。
東京を焼け野原にしてしまうほどの大規模な空襲、それによる火事により家を失い、そんな人々がなんとか生活していくために他人の家に間借りさせてもらい、そのお礼として家主に渡していたお金が、現在の礼金の原型というわけです。

諸外国から見ると礼金は日本特有の習慣ですが、日本国内においても関東近辺特有の習慣といえます。
上記した空襲も被害が甚大だったのは東京周辺であって、そのため特に被害の無い地域だと、住まいを失うことも礼金の習慣が生じることも無かったのですね。

敷金や敷引き、または保証金などと呼び方や内容が異なるように、関東と関西では賃貸物件の賃料に関する様々なことが異なります。
上京してきて初めて「礼金」なるものを知ったという人も少なくありません。
そして、月々家賃を支払っていくというのに、そのうえ礼金も払わなきゃならないなんておかしい!と憤ることになるのです。

最近では礼金が必要ない物件も増えてきました。
礼金が生まれた経緯は前述したとおりで、今は時代が移り変わり、状況が一変してしまっていますからね。

しかしそれ以上に、礼金を否定する消費者の多さが礼金排除の傾向に拍車をかけているように思えます。
「借りてあげている」という強気な思いが「お金がかかるなら借りない」という考えをも生み出し、貸主に礼金を無くすことを余儀なくしているのです。
(貸主からすれば「貸してあげている」ということになるのですが)



海外での賃貸住まいを経験した方が、日本へ帰ってきてそこでも賃貸物件を借りようとしたとき、誰もが驚いて閉口してしまうというのが礼金です。
というのも、海外における賃貸物件には、日本の礼金に代わるものが存在していないため。
なので、外国人が日本の賃貸事情を知ると、日本の賃貸物件は利用者を振るい落としている、とまで感じられるようですね。

何度も述べていますが、礼金とは“お礼として”大家さんに渡すもの。
お礼というなら契約金(更新料)や毎月の家賃を支払っているというのに、その上どうしてわざわざ「礼金」と名を変えてまで余分にお金を支払わなくてはならないのか・・・と、海外の風習ではそう考えられるのです。

考えてみれば、日本で礼金という習慣が生まれたのは、戦後の住むところがない時代に住居を与えてくれた人へのお礼というのが始まりでした。
しかし現在は時代が変わり、住むところは溢れ返っていますし、しっかりと家賃を支払うシステムが成り立っています。

また、現在の賃貸物件とは、所有者が好意ではなく商売として貸し与えているものであり、さらには不動産投資として経営しているものでもあります。
確かに、昔の習慣が未だに引き継がれているのは不思議な話かもしれませんね。

さて、敷金礼金の話からは少々逸れますが、日本の賃貸物件は利用者を振るい落としていると感じられる理由には、契約の面倒さという理由も挙げられます。
日本の賃貸物件は、契約の際には保証人をたてて、収入を証明できる書類を準備し、審査してもらわなくてはなりません。
しかし、海外では契約者本人が大家さんや不動産会社と対面し、身分証明書を提示さえすれば借りられます。
この契約の面倒さというのも日本特有のようで、利用者に厳しいと考えられるシステムの所以でもあるのです。



敷金は家賃の支払いが遅れたり退去の際に現状回復の必要が出た場合の費用として、あらかじめ契約時から“預けて”おく賃料。
礼金は日本特有のお礼という風習が未だ残り、場合によっては広告費などに充てられている賃料。
・・・ということが、これまでに理解できたかと思います。

日本における賃貸物件の敷金や礼金にはこのような意味があるのですが、では海外における賃貸物件ではどうでしょうか。

敷金というのは、いずれ必要になるかもしれない費用をあらかじめ預けておくものですから、理にかなっていると言えるでしょう。
不必要ならば契約者に返還されるものですしね。

こんな敷金にあたるものが、海外にもあります。
海外の英語圏では「Deposit」(デポジット)と呼ばれていて、こちらも日本の敷金と同じく、家賃や修理代の担保として預けておくものです。

ただ、海外の場合はその相場が日本とは大きく異なるようですね。
日本の場合敷金は家賃の1~2ヶ月分が相場となっていますが、海外では1~4週間分と、月単位ですらないのです。
どちらもいずれは返還されるとはいえ、賃貸契約に必要な初期費用のことを考えると、海外の方が物件を借りやすいと考えられるでしょう。

敷金は物件利用に問題なければ返還されるものなので、少しくらい高くても構わないという考え方もありますが、初期費用と言う意味ではやはり金額も重要でしょう。
初期費用が高いと、いざ賃貸物件を借りようと思っても金銭的問題によって断念してしまうことだってあります。
安ければ気軽に好きな部屋を探して引っ越せるのに・・・と思ったことはありませんか?
そのため、敷金(デポジット)が安い海外では、お金を気にすることなく、何回も引っ越しているという方もいるほどです。



礼金に関しては、その意味を歴史的な習慣も踏まえて以前にご説明しましたね。
そのため、一昔前まではあたりまえのものでした。
しかし、日本の経済状況や考え方等の欧米化にともない、礼金についてもどんどん変化してきています。
かつては礼金は家賃の2ヶ月分だったのが、1ヶ月分となり、さらには礼金なしのところも多く出てきています。
・・・その一方で、家賃の3ヶ月分というところもありますけど。

何度かご説明しているとおり、礼金は入居者の心遣いというのがその始まりです。
気持ちの問題だったのが、何故か金額を指定されるようになり、お礼という意味があるにも関わらず支払いが義務のようになってしまったものです。
そのため、礼金に関しては法律では特に定められていないのですよ。
また、お礼の心遣いでわざわざ金銭を余分に支払うということ事体が、他国にはない、日本独特のものなのです。

最近では、家賃は毎月支払っているのだし敷金も預けているのだし加えて更新料も支払っているのだから、そのうえ礼金まで払う必要なんてないのではないか!?という考えが広まっています。
不況という苦しい経済状況も理由となって、なるべく賃料の総額が低いところを選ぼうとする傾向があるため、礼金なしの物件も珍しくはなくなってきました。
もしかすると、今後日本の不動産業界からは礼金というものが姿を消すのかもしれませんね。

・・・いえ、礼金どころか敷金さえ無い物件も増えてきています。
礼金がゼロ、敷金もゼロの、ゼロゼロ物件なるものが最近の物件の4割近くを占めているのだとか!?



敷金と似た名称の賃料に「敷引」というものがあります(しきびき、と読みます)
こちらは関西の賃貸物件にあるものですが、決して敷金と同じものではありませんのでご注意ください。
敷引とは、敷金と保証金を合わせたようなものです。
敷金は特に問題がなければ退去時に返還されますが、保証金は返還されませんね。
よって、敷引は何割かは返還されるけれど、残りの数割は差し引かれるものなのです。
敷金でも現状回復に必要な分は差し引かれますが、それがなければ全額返還されるのに対し、敷引は必ず何割かが差し引かれるということです。

ここまでの説明で想像がつくかとは思いますが、「敷引」という名称は「敷金から差し引く」という意味からきています。
あらかじめ敷金から差し引く金額を決めておき、退去時にはその範囲内で現状回復を行うのです。
上記では敷引を「敷金と保証金を合わせたようなもの」とは述べましたが、保証金としての意味合いの方が強いかもしれません。
敷引のうち返還されない分を解約引というのですが、敷引が30万円なら、そのうち解約引は25万円程度です(あくまでも一例ですが)

敷引は戻って来ない金額の方が大きいため、敷金制に慣れた方々にとっては納得のいかないものかもしれませんね。
しかし逆を言うと、特別な理由がない限り敷引はそれ以上の金額を請求されることはほとんどないものでもありますので、その点が敷金とは違いますね。
特別な理由とは、部屋内で喧嘩した(汗)ことによる損傷などになりますので、現状回復ガイドラインで借主負担とされていることでも、それに含まれない可能性があります。



礼金は大家さんに支払うお礼のお金です。
敷金とは違い、退去しても戻ってくることはありません。
つまり、礼金ゼロの物件は大家さんの好意であるとも考えられるでしょう。
しかし、その一方でしっかり家賃の1カ月分を必要とする物件もあります。
2カ月分の物件もあります。
いったいどのようにしてこれらの金額が決まるのでしょうか。

礼金については、何カ月分までという決まりはありません。
さすがに3カ月以上分というのは聞いたことがありませんが、大家さんにとっては多ければ多いほど得するに決まっていますね。
最近は消費者の節約志向が高まっているので、礼金くらいは安くしないと肝心の入居者が現れないとして礼金ゼロの物件も多くなってきています。
しかし、大家さんにとって賃貸経営は投資の一種なので、リスクにも備えなければならないのです。

賃貸経営のリスクは空き部屋が出ることです。
空き部屋があると、その分家賃収入は得られません。
しかし入居者が退去してしまうと、次の入居者が現れるまで何ヶ月かかるかなんて保証はありませんよね。
そのため、空き部屋となっている間の家賃に代わるものとして、礼金が必要とされていることもあるのです。

こんな礼金ですが、賃貸契約の際に値下げ交渉ができることをご存知でしょうか?
敷金は現状回復費になるものですし、家賃は相場や物件の状態から決められるので、それなりの知識がないと値下げ交渉は不可能ですが、上記にも挙げた通り礼金はお礼として払うお金なので、大家さんの考え方によっては値下げしてもらえるかもしれませんよ。



国土交通省にて定められている敷金に関するもので「現状回復ガイドライン」というものがあります。
これは、現状回復費のうちどの修理に対して敷金が充てられるのかといった、借主負担と貸主負担を明確にしたものです。

以前にもご説明したように、敷金は借主の故意あるいは不注意による傷等の修理に充てられるものであって、生活の中で必然的にできてくる汚れ等の修繕には充てられるものではありません。
このことは、現状回復ガイドラインでしっかりと区別されているのです。

しかし「現状回復ガイドライン」はあくまでもガイドラインであって、厳守すべきものとして定められた法律ではありません。
大家さんの中には現状回復ガイドラインの存在すら知らず、そればかりか不注意による傷であろうと必然的な汚れであろうと、現状回復費は全て借主が負担するものと思い込んでいる人さえいます。
そのため、敷金の返還を巡るトラブルが今も絶えないのですね。

綺麗に暮らすことを心がけていて傷付けた心当たりもないのに敷金がほとんど返ってこないのであれば、大家さんと話し合い、交渉しなくてはなりません。
しかし、大家さんが現状回復ガイドラインを知らないとなると話にならないでしょう。
いちばん良い方法は弁護士に相談することですが、弁護士への相談は返ってくる敷金以上の費用がかかる場合がありますので、まずは大家さんと借主を仲介している不動産会社に相談してみることをお勧めします。
個人でアパート経営している大家さんなら現状回復ガイドラインを知らなくても無理はないと考えられますが、不動産会社ならガイドラインを知らないなんてことはないでしょう。
うまい具合に不動産会社に大家さんを説得してもらえると良いですね。
また、最近では敷金返還の相談を受けている業者もありますので、信用できそうなところを選んでご利用ください。



敷金と礼金について説明しています。
前回は敷金の説明だったので、今回は礼金について。

~礼金とは?~

礼金とは、その名の通りお礼のお金として大家さんに支払われるものです。
こちらは敷金とは違い、いずれ返してもらえるというものではありません。

わざわざお礼として礼金を支払わなくても、毎月家賃を払って2年ごとには更新料も支払うというのに、どうして礼金が必要なの?
・・・と納得できない方はたくさんいらっしゃいます。
実は、この礼金には過去の慣習が深く関わっているのです。

終戦直後にまで遡りますが、当時の日本は戦争の爪後で焼け野原が広がり、住まいを失った人たちが多くいました。
そんな状況の中住処を与えてくれたとなると、感謝の気持ちは言葉だけでは伝えきれませんね。
言葉では足りない「部屋を貸してくれてありがとう」という気持ちをお金に代えて渡した、というのが礼金の始まりと言われているのです。
この慣習は当時の東京を中心として広がっていったのだとか。

しかしこれはあくまでも過去の慣習であり、現代では必要がないかのように思えることでしょう。
現代の礼金には、実は大家さんにとっても深い意味があるのです。
大家さんはアパートやマンションに空き室があると、入居者を募集するべく不動産屋に依頼して空き室の旨を賃貸を探している人たちに紹介してもらわなくてはなりません。
紹介の方法は、不動産情報誌やインターネットなど様々です。
その紹介に必要な費用を、大家さんは礼金で充てているのですね。

入居者が支払った礼金は、まわりまわって不動産屋へ支払われているということになります。
入居者自身が不動産屋へ直接支払っている費用には仲介手数料というものがあるので、どうにも余分な支払いのような気がしないでもありませんが・・・(汗)



« Older Entries